本年度は、3年計画のうちの1年目にあたるため、予備調査段階として位置付けられる。本年度は、学生が作成した文章の検討、及び、文献収集・文献リストの作成、及び、コミュニケーション教育、認知心理学、社会心理学、日本語教育、医学教育、医学部基礎科目担当教員(医師)などの専門家との意見交換、及び、アンケート(自由記述式)の作成・実施を中心に行った。 アンケートの目的は、二つある。一つ目は、臨床や教育の場における、文章(書くこと)によるコミュニケーションの実態を明らかにすることである。二つ目は、学生の現状を踏まえた上で、文章によるコミュニケーションのために必要とされる思考力や表現力を涵養するための教育上の示唆を得ることである。 主な調査対象は、東京女子医科大学卒業生の現役医師、及び、東京女子医科大学の教員である。卒業生を対象にした目的は、大学病院を含む様々な医療機関に勤務している医師を対象にすることで、調査結果の偏りを減らすためである。また、東京女子医科大学の教育カリキュラムの特色を理解したうえでの教育的示唆を得られると予想したためである。さらに、東京女子医科大学の教員を対象にした目的は、学生の現状を把握するためと、卒後教育を視野に入れつつ卒前教育における、文章コミュニケーション指導の現状、及び、ニーズを浮き彫りにするためである。 本研究では主に、文章(書くこと)によるコミュニケーションを扱っているが、四技能(話す、聞く、読む、書く)を統合的に捉えているため、対話によるコミュニケーションも視野に入れている。
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