研究概要 |
平成14年度は,「統御された無作為化実験での要因効果を受動的な観察研究から推測するための,観測変数の選択基準や個体の選択基準といった観察計画法の基本的フレームワークを与えること」を目的とした研究を行った.その結果,因果ダイアグラムの理論のフレームワークにおいて以下のような結果を得た. 1.反応変量の観測が困難である場合において,総合効果を識別するのに十分な代用特性と共変量集合の組を選択する基準を与えた.また,そのときの因果的効果の推定精度についても検討した. 2.複数の処理変量から反応変量の分散への因果的効果を定式化した.また,複数の処理変量から反応変量への因果的効果を回帰モデルにより推測する方法論を開発した. 3.線型構造方程式モデルにおいて,複数の処理変量へ条件付き介入をおこなったときの反応変量への因果的効果を定式化することにより,従来の条件付き介入効果の推測法を一般化した.また,反応変量の分散を小さくする条件付き介入の方式を定式化した. 4.バックドア基準を満たす共変量集合が複数存在するとき,分散に対する因果的効果を推定精度の観点から,共変量の優劣関係について検討した.また,その優劣関係がグラフ構造を用いて記述できることを明らかにした. 5.因果関係に関する情報が不十分であるとき,因果的効果を識別するための共変量を絞り込むための方法論を提案した. 6.回帰モデルの枠組において,条件付き併合可能性条件を導出し,バックドア基準との関係を明らかにした.
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