研究概要 |
水産資源学では,モデルの複雑さに比して,データの所有する情報量が少ない場合がしばしばある.このような場合,AIC等の規準値に大きな差が見られないことが多い.その状況で,単一のモデルを選択し,その結果を利用して例えば現存資源量や漁獲枠を算定することは,資源を枯渇させる危険が伴う.そこで本研究では,モデル選択の不確実性を考慮した場合の推定量の導出方法と,推定量の不確実性を導出する方法について研究すること目的とする. 本年度は,上記目的の達成のための基礎的な研究を行った.モデル選択規準の評価値にそれほど違いが見られない例をリストアップした.その中から比較的簡略な水産資源解析モデルとしてカバーネット選択性試験による網目選択性曲線の推定問題に注目し,AIC, BICなどのモデル選択の性能,およびモデル選択を伴う推定量の精度評価法について検討した.この際,モデル選択を伴う推定量をランダマイズド推定量とみなした.その結果,仮に真のモデルが既知であっても,そのモデルが複雑である場合には,必ずしもそのモデルのみを利用することが推定精度の意味で適切とは言えない,そして本モデルにおいてモデル選択を伴う推定量は良好なパフォーマンスを示すことなどが示唆された.なお,この研究の一部は,Kitakado, Mituhasi and Tokai (2002)に掲載された.
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