研究概要 |
今年度は,国内外で研究発表を積極的におこない,変化点解析のために今まで構築してきた理論の汎用化を目指した. まず,森林経営学の立場から,林木の直径成長データに対する変化検知法を提示した.隣接木との競合や除間伐,自然枯死などによる周辺環境の変化の影響を考慮すると,林木の成長はある傾向的な成長過程においてなんらかの変化を伴っているものといえ,森林の成長モデル構築,さらに森林の炭素固定量予測のためには必要不可欠な作業といえるからである.統計の方法論としては,成長モデルの変化検知の問題を信号検知の問題に置き換え,検定を構成することを提案した.このとき,検定統計量は離散集合と連続集合が混ざった集合の要素が添字となる正規確率場の最大値となり,その裾確率(分布)評価に対する一般論は存在しない.そこで微分幾何を用いるチューブ法とBonferroniの不等式を併せて用いる考え方を導入し,保守的な検定を構成した.ちなみにこのタイプの検定統計量はさまざまな状況で現れることが予想される. また,ある正則条件を満たす独立観測系列に対する複数の変化点をもつモデルに対し,変化点数選択のための尤度比検定統計量の漸近分布論の精緻化をおこなった.さらに昨年度の理論を拡張してそのモデルの情報量基準を評価し,変化点パラメータの罰則は通常のパラメータの罰則とは異なることを示した.
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