研究概要 |
本研究はファイナンスにおけるマルチファクターモデルを統計的により厳密に取り扱いたいという応用問題が出発点となっているので,本年はまず分析のためのデータセットの作成を行った.具体的には,月次の株価情報と財務関連のデータを収集した.アルゴリズム構築に先立ち,情報量フィルタとその平方根分解を利用した逐次公式に関して,先行研究のサーヴェイを行った.特に,状態変数の推移に非定常モデルを仮定する場合の,初期分布の厳密な扱いについて,情報量フィルタとの関連を重視して整理した.本研究が想定するデータは,多変量かつ同時点での相関の強い時系列データである.従って,状態空間モデルの観測方程式の共分散構造にさまざまなモデリングを行うことで,計算負荷とモデルの複雑さの両面でメリットのあるモデルを探索した.具体的には,因子分析的なモデリングとパターン行列の利用を考案した.プログラミングの過程で,一度に扱う観測次元が例えば1000次元程度になるときには,やはり並列計算に依らなければ計算時間が実用的ではないことが判明し,並列プログラミングを行った.また,準ニュートン法に基づく非線形最適化手法で最尤推定を試みると,時点・データセットによっては必ずしも収束が達成されない場合もあり,逐次二次計画法を利用することとした.これは当初f2cによってFortranソースコードを利用していたが,並列化のために改めてC言語でプログラミングを行った.この他,将来的に非線形ノンパラメトリック時系列モデルにおける次元縮約を考慮するときの基礎として,正則化項付き非線形回帰モデルにおける情報量規準の構築に関する研究を行った.また,共通季節成分を持っ多変量季節調整モデルに向けた基礎的研究として,状態空間モデルの枠内で季節単位根問題をモデル選択的に処理する研究を行った.
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