研究概要 |
本研究では,画像圧縮における高性能ベクトル量子化コードブックの学習アルゴリズムについて考察を行なった.特に,復元ノイズを抑制するために,所与の画像タイプに特化したコードブックを生成する手法を提案した. 所与の汎用コードブックCをもとに,あるタイプの画像を量子化することを考える.そのタイプに属する訓練画像から抽出した画素ブロック(ベクトル)集合のうち,C中の如何なるコードをもってしても許容誤差以内では量子化できない画素ベクトルを,そのタイプに特有なベクトルと定め,それらの集合Esを学習ベクトル系列と考える.一方,Cによる量子化において,一度も使われないコードを取り除いたものをC'としておく. Esに対する学習は,データマイニングの主要技術のひとつであるk-Meansクラスタリング手法を拡張して行なう.具体的には,画像データから抽出したDCT係数の分布の偏りに応じて,LL, HL, HHの3クラスに学習ベクトルを分類し,各クラス毎にクラスタ数を定めることで,よりきめ細かなクラスタリングを行い,復元誤差を抑制する.LLは様々な値の係数が出現するクラスのため,より大きなクラスタ数を割り当てて詳細にクラスタリングする必要があるが,HHはすべての係数がほぼ0となることから,その分クラスタ数を少数に設定してもほとんど劣化は生じない.こうした学習の結果得られるコードブックC_EsとC'の和集合を,この画像タイプに特化したコードブックとして出力する. 計算機実験の結果,画像タイプに依存した汎用コードブックの部分的修正と,DCT係数の分布を考慮したK-Means法の拡張が,圧縮画像の復元ノイズ抑制に有効であることが確認できた.
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