本年度は、係数に有界な誤差をもつ1変数代数方程式に対し、係数の摂動によって取りうる実根の最大個数を、m重根をm個の根と数えた上で見積もるための基礎研究を行った。 1変数代数方程式の実根の個数を計算するには(拡張)Euclidの互除法で計算される多項式剰余列に基づくSturm法がよく用いられるが、一般的なSturm法はm重根を1個の根として数えるものであり、m重根をm個の根と数えるには、多項式剰余列を繰り返し計算した上でSturm法による実根の数え上げをする必要がある。そこで、本年度はまず、m重根をm個の根と数えるために多項式剰余列を繰り返し計算したものを「再帰的な多項式剰余列」として一般化を行った。 次に、1変数代数方程式の実根の個数は、与方程式の係数の摂動により、変化する可能性がある(特に、与方程式が悪条件の場合や重根・近接根をもつ場合、実根の個数は著しく変化する場合がある)。この場合、再帰的な多項式剰余列の形も変化する可能性があるが、与方程式の係数の摂動から多項式剰余列の形の変化を直接見積もるのは困難である。そこで、本研究では、多項式の部分終結式に着目した。部分終結式は定数倍を除いて多項式剰余列の要素に等しく、その係数は与多項式の係数からなる行列式で表される。したがって、与方程式の係数の摂動に伴う多項式剰余列のゼロ判定の問題を、部分終結式の係数をなす行列式の要素の摂動に伴うゼロ判定の問題に帰着させることができる。本年度は、再帰的な多項式剰余列に対応する部分終結式を定義した。 今後は、再帰的な多項式剰余列に対応する部分終結式において、係数を表す行列式のゼロ判定を行う実際的な方法を見出し、それをもとに、与方程式の係数の摂動に対応して実根の個数を実際的に見積もる予定である。
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