画像復元問題で用いられる射影法は、問題に応じ複数の制約を課し各制約への凸射影を組み合わせる事で、適当な充足可能解を求めるものであり、再構成、超解像問題等へ幅広く用いられている。画像復元問題においては、元々の凸射影法により求解可能である充足可能性問題に対して(a)問題によって様々に与えられる原画像との距離を最小にする必要がある(b)空間領域と空間周波数領域の両方に制約を掛けたときに充足不能となる可能性があるといった困難がある。本研究は上に述べた画像復元問題を始めとする逆問題の解法を研究代表者らにより導かれた「非拡大写像の不動点定理」に基づいて構成するものである。 研究初年度である平成14年度の成果は次の通りである。 1 研究代表者らにより導かれた不動点定理においては、複数の制約を満たす充足可能解の中で、追加基準たる強凸の目的関数を最小にする最適化問題の求解が可能であった。本研究では、この不動点定理を一般化し、広義凸関数と呼ばれるより広いクラスの目的関数を用いることを可能とした。この拡張により、多様な距離基準を取ることが可能になった他、擬パラメタの導入が可能となり、適用可能性が拡大した。 2 1に挙げたげた不動点定理を画像復元等の問題へ適用する際、収束速度に大きな影響を与える緩和係数を実問題で使われる制約や、目的関数に着目し、調べた。特に、目的関数の微分のリプシッツ定数に依存して決まる緩和係数について新しい知見を得た。これにより逆問題の解法の収束速度を向上させるための理論的基盤を得た。 3 (b)に挙げた従属不能な問題は、必ず満たす必要のある、優先度の高い制約が複数ある場合、これまで扱いが困難であった。この問題を1で述べた拡張された不動点定理に基づき、非拡大写像と目的関数の構成法を工夫し解消した。 なお、これらの成果は現在、投稿、発表準備中である。
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