画像復元問題で用いられる射影法は問題に応じ複数の制約を課し、凸制約を組み合わせることで適当な充足可能解を求めるものであり、画像再構成、超解像問題等へ幅広く用いられている。本研究は画像復元問題を始めとする逆問題の解法を研究代表者らにより導かれた「非拡大写像の不動点定理」に基づいて構成するものである。本研究の成果の概要は次のとおりである。 1.研究代表者らにより導かれた不動点定理は、複数の制約を満たす充足可能解の中で、追加基準たる強凸の目的関数を最小にする最適化問題の求解が可能であった。本研究では、同定理を、広義凸関数の目的関数へ適用出来るよう一般化した。結果、現画像との隔たりを最小にする画像復元問題において、扱うことのできる隔たりの尺度の規準を大幅に拡大した。 2.1に挙げた不動点定理を画像復元問題へ適用する場合、複数の制約を設定する必要がある。この場合、統計的性質より適応的に導出される制約や、周波数領域における制約を含む場合に、充足可能性が問題となる。本研究では制約の優先度や、重要性に応じて、柔軟に制約の情報を解集合に反映する、一般化充足可能解集合を導入することで、この問題を解決し、同不動点にもつ非拡大写像の構成法を与えることで、不動点定理を用いた具体的な求解アルゴリズムを与えた。 3.視覚的に自然な画像を獲得するための平滑化基準として全変動情報が注目されている。全変動情報の制限を行うために有効な劣勾配射影を用いる方法は、本質的にはquasi-非拡大写像の共通不動点による定式化である。本研究では劣勾配射影と同じ不動点を持つ、最適分離超平面への射影を用いたquasi-非拡大写像を構成し、従来標準的に用いられてきた劣勾配射影による方法と比べ、収束速度を決定付けるステップサイズを最大2倍にすることを可能にした。
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