研究概要 |
本研究の目標は,従来その利便性のみが議論されてきた巡回型計算を対象に,分散システムとしての全域チェックポイント取得問題を取り上げ,取得アルゴリズムを示すとともに実システム上での評価実験を通してその有効性を実証的に検証することにある.本年度は,昨年度に得られた2つの準備的研究の成果: 1.実証実験プラットフォームとして,環境適応型移動オプジェクト・モデルに基づく巡回計算支援ミドルウェアm-P@gentを構築し,RgSSをベースに補償オペレーションの概念を導入した移動プロセス個々のロールバック機構を設計した. 2.「移動プロセスの数を限定した小規模システムでの一貫性ある全域チェックポイントの取得」とした場合の,全域チェックポイント取得アルゴリズムをRgSSをベースに設計した.を踏まえ,問題を「移動プロセスを任意個含むシステムで一貫性ある全域チェックポイントを求める」とし,アルゴリズムの一般化を進めるとともに,実装に向けた詳細化の見直しを行い,アルゴリズムの定性的な検討を行った.さらに,PDAや情報家電機器等の限定された計算資源しか持たない機器上でも動作し,本課題の実験プラットフォームとして有用な,環境適応型移動オプジェクト・モデルに基づく巡回計算支援ミドルウェアm-P@gentの動作プラットフォームの拡充を行うとともに,上記アルゴリズムを同実験プラットフォーム上に実装,適当な障害発生条件の下で動作させ,データを収集,理論的な予測値との比較と併せて,実装されたアルゴリズムの詳細な性能を評価した.特に,最終年度へ向けて,アルゴリズムの完成度を高めるとともに,それまでの実装経験を踏まえ,実システムでの性能を統合的に評価するベンチマーク・フレームワークを併せて提案した.
|