本年度は、グラフの多層埋め込み及びそれに関連するグラフの描画について考察した。 グラフの3次元描画とは、グラフの頂点を3次元格子の格子点に配置し、辺を交差しないように描画するものである。ここで、辺の描画に関していろいろな制約が考えられるが、辺を直線とする場合には3次元直線描画と呼ばれる。 グラフの多層埋め込みは、グラフの3次元描画の一種であり、各辺を格子上のパスとする3次元描画に対応している。特に、グラフの多層埋め込みは、VLSIレイアウトのモデルとして提案されているものであり、格子の層数(3次元格子の高さ)を定数で押さえた上で、格子の面積(縦×横)を小さくするような埋め込みが求められている。 本研究では、正則反復ラインダイグラフの多層埋め込みに関して研究を行い、正則反復ラインダイグラフの多層埋め込みにおいて、層数を定数としたときに必要な面積の下界Ω((n^2)/(log^2n))を与えた。ここで、nは反復ラインダイグラフの頂点数を表している。前年度までの研究で、O(n^2)の上界が得られており、これらのギャップを改善できるかどうかが今後の課題となっている。 また、反復ラインダイグラフの3次元直線描画について考察し、反復ラインダイグラフの3次元直線描画に必要な3次元格子の大きさ(縦×横×高さ)の上界O(n)を与えた。前年度に考察した反復ラインダイグラフのキューレイアウトの結果を利用してもこの上界を得ることができるが、反復ラインダイグラフのトラックレイアウトを考察することにより、O-記法に隠れている定数を改善することができた。
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