研究概要 |
最小値独立置換族の構造の解明、特にその最小サイズの解明の一環として、k-制限最小値独立置換族(k-restricted min-wise independent permutation family)と呼ばれるクラスについて、置換族のサイズの改良された下界を示した。具体的には、n点集合に作用するk-制限最小値独立置換族は、少なくとも次の個数の置換を含んでいることを証明した(簡単のため、kが奇数の場合のみ示す):(n-1) choose ((k-1)/2)+(n-1) choose ((k-3)/2)+...+(n-1) choose 0.ただしn choose rはn個のものからr個を非復元抽出するときの組み合わせの数である。従来まで知られていたk-制限最小値独立置換族のサイズの下界は、この式の第一項に相当するものであった。従って、この式の第二項以降の分、下界が改良された(大きくなった)ことになる。また、この下界は、置換族から置換を抽出するときの分布が一様分布であるか、そうでない一般の分布であるかを問わずに成立している。さらに、k-制限最小値独立置換族のサイズ上界について、k=3およびk=4という特別な場合についてであるが、以下のことを示した:サイズが0(n log^2 n)の3-制限最小値独立置換族が存在する。また、サイズが0(n log^3 n)の4-制限最小値独立置換族が存在する。これらは、それまで知られていた上界n^((1+2/lg n)k)(Itoh-Takei-Tarui 2000)のk=3,4の場合を大きく更新している。のみならず、これらの上界は、前述した下界のk=3,4の場合それぞれと比較して、log nの多項式のファクターの違いがあるのみであり、真の最小サイズに近い上界と期待できるものである。これらの上界は、有限幾何を応用した置換族の具体的構成により示されている。
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