本研究の目的は、地球規模で分散したソフトウェア開発を支援する、構成管理システムの構成法を明らかにすることである。これまでの調査・研究により、このようなソフトウェア開発には、分散した各拠点ごとの方針で構成管理システムを運用し、拠点間の分散・協調形態に応じて、必要な成果物や変更履歴を共有する運用形態が適していることが明らかになった。 本年度は最初に、昨年度CVS (Concurrent Versions System)のプロキシ・サーバとして実装した、拡張可能な構成管理システムのオブジェクト指向フレームワークの再設計を行った。新しいフレームワークではInterceptorアーキテクチャ・パターンを採用し、拡張機能がプロキシ・サーバの状態遷移に割り込み、データの流れと制御の流れの両者を変更することを可能にした。これにより拡張性の幅が広がり、構成管理システムに組み込み可能な支援機能のバリエーションが広がった。 次に、拠点間の分散・協調関係を反映可能なリポジトリの分散機構を、構成管理システムに組み込まずに分離した形で実現する研究を行った。この研究ではリポジトリの分散機構を、1)他拠点の構成管理システムのリポジトリの任意の部分を組み合わせて、自拠点のリポジトリを構築できる細粒度複製、2)リポジトリ間の関係を追跡する協調支援データベース、3)リポジトリに加えられた変更を拠点間で交換する4つの操作により実現した。これにより、異なる運用方針を持つ拠点間で、必要な分散・協調形態を実現できることを明らかにした。 結果として、地球規模に分散したソフトウェア開発を支援する構成管理システムは、上記の拡張可能な構成管理システムと、細粒度複製を基にしたリポジトリ分散機構の適切な組み合わせにより実現できることが明らかになった。
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