平成15年度は、平成14年度に行なった研究をさらに発展させ、UML図の一つであるステートチャート図(以下SC図と略す)に対し、SC図の間の依存関係をより精密に解析する手法を開発した。 2つのSC図間の依存関係は次のように定義している:SC図AのアクションがSC図Bにおけるイベントであるとき、かつそのときに限りBはAに依存する。開発した手法は、この依存関係を「無いとみなせる」かどうかを解析する手法である。いま、SC図Aの遷移で、そのアクションがSC図Bのイベントであるもの全てが「無限にしばしば」発生すると仮定する。このとき、そのようなイベントを持つBの遷移は必ず起きることが保証される。そこで、そのようなBの遷移からイベントを消去する。AとBの協調動作のタイミングは考えずに、Bを単独で見た場合は、このようにイベントを消去しても、Bは元のものと等しく動作する。このような場合にAとBの間の依存関係を無いとみなすのである。SC図におけるある遷移が無限にしばしば発生することの検証は、ω-オートマトンの理論を用いて可能である。 本年度に開発した解析手法は、前年度の成果である、「SC図間の依存関係を表す有向木の導出手法」に付加できる。解析の結果、依存関係を無いとみなせる場合があれば、有向木は分割され、複数のより小さい有向木の群となる。前年度の成果にあるように、SC図の変更は有向木の矢印の向きに成される。有向木が分割されることは、変更作業の独立性が高くなること、すなわち、ソフトウェア開発作業の効率が高くなることを意味する。 平成16年度には、現実規模のソフトウェアに対し、これまでの理論的成果の適用によってどの程度開発作業が効率化されるかを検証することを考えている。なお、現在、平成14年度、15年度の成果をまとめた雑誌論文の投稿準備中である。
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