本研究では、まず、機器保修の訓練環境を実現する際に必要なPhysically-baseの手法に基づく剛体挙動シミュレーションを単体の計算機上へ実装した。その後、剛体挙動シミュレーションの処理の一部を、PCクラスタ上で分散して処理する手法を開発し、現時点で容易に入手可能な計算機環境を用いたリアルタイムシミュレーションの実現の可能性を検討した。その後、PCクラスタ上への分散アルゴリズムの改良、予測処理機能の開発を行い、PC単体を用いてシミュレーションを行う場合に比べて、2台の場合は約65%、4台の場合は約140%の高速化が可能であることを示した。 具体的には、剛体挙動シミュレーションの処理の内、どの処理にどの程度の計算量が生じるのかを調べるため、単体の計算機上で剛体挙動シミュレーションを実行できる環境を開発し、剛体挙動シミュレーションの各処理の負荷を計測する実験を行った。実験の結果、ポリゴンレベルでの厳密な衝突判定と衝突時の接点間に働く力の算出の負荷が高いことを確認した。 次に、剛体挙動シミュレーションの処理を効率的に切り分ける方法や切り分けた処理を計算機に動的に割り当てる方法、計算機間の通信プロトコル等を開発した。そして、PCクラスタ環境上に剛体挙動シミュレーションを実行するシステムを開発した。その後、同一の仮想空間の剛体挙動シミュレーションのシミュレーション速度を各環境で比較し、剛体挙動のリアルタイムシミュレーションの実現可能性を検討した。その結果、一般に容易に入手可能なハードウエアを用いて高速化が可能であること、複雑大規模な仮想空間ほど分散・並列化に適していることを確認した。 さらに、タスクの負荷の大きさが不均等な場合でも効率的に負荷分散が行えるアルゴリズム及び、計算負荷が小さい時に将来実行する必要があるタスクを予測して実行する予測処理機能の開発を行い、同じハードウエアでもより効率的に並列化を行える手法を実現した。
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