研究概要 |
バルク同期スケジューリング問題(以降BSP問題)に対する近似アルゴリズム開発のための研究を行つた.その結果,タスクの実行時間がすべて単位時間であり,通信遅延が一定,かつ,プロセッサが必要なだけ使える場合に近似率4の精度保証をもつ近似アルゴリズムを開発できた.また,入力にさらにいくつかの制限を加えた場合に近似率2の精度保証をもつ近似アルゴリズムを開発できた.さらにBSP問題の近似の限界を明らかにするための研究を行った.その結果,決定性チューリング機械で多項式時間で計算可能な問題のクラスPと非決定性チューリング機械で多項式時間で計算可能な問題のクラスNPが等しくない限り,BSP問題に対しては,近似率1.2未満の精度保証をもつ近似アルゴリズムは一般には存在しないことが証明できた(ほとんどの計算機科学者はP≠NPであると信じている).これによりBSP問題の近似の限界を明らかにできた.この結果は理論的に興味深いだけでなく,性能のよい近似アルゴリズム開発のための重要な指針となるものである.この結果は米国計算機学会(ACM)主催の国際会議Euro-Par 2002にBSP問題の近似不可能性に関する世界で最初の結果(文献1による)として採録された(文献2):[文献1] Drozdowski, M., Milis, I., Rudolph, L., and Trystram, D., "Scheduling and Load Balancing", European Conference on Parallel Computing (Euro-Par 2002), LNCS Vol.2400, pp.187-188,2002;[文献2] Fujimoto, N. and Hagihara, K.:"Non-Approximability of the Bulk Synchronous Task Scheduling Problem", European Conference on Parallel Computing (Euro-Par 2002), LNCS Vol.2400, pp.225-234, sponsored by IFIP, ACM, and DFG, Paderborn, Germany, August,2002.
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