研究概要 |
ネットワーク環境での最も基本的な要求は,効率よくネットワーク内を巡回できるようなルーティングアルゴリズムを設計することにある.しかし,大規模なネットワーク網や移動系に対する経路選択を考えた場合には,最適な経路を決定するための重要な情報である網構造が時間と共に変化し,動的環境の変化に対応可能なスケーラビティを重視した情報処理技術を確立することが必要である.本年度はこのような要求に応えるため,各ノードが動くことによりノード間の距離,網の形状が時々刻々と変化するネットワーク網上での移動ノードの巡回問題に対するアルゴリズムの設計を行った. 1.xy座標系において,すべての移動体がx座標に平行に等速直線移動し,それらの移動体を巡回者がy座標に平行に移動した場合に最も多くの移動体を巡回できるような最大巡回位置発見アルゴリズムの設計を行った.すべての移動体が平行な二直線上を移動している場合にはO(n^3)時間のアルゴリズムが存在し,三直線以上の一般の場合にはO(n^6)時間のアルゴリズムが存在することを示した. 2.移動体の移動領域に制限がある場合には,有向非巡回グラフの最長路を求める問題の拡張問題になることを示し,最大巡回のためのO(n^3)時間のアルゴリズムを設計した. 3.一度に巡回できる移動体の数(容量)を制限した移動体に対する最大巡回問題の考察を行った.容量を1に制限した場合,移動体が任意の速さで等速移動する場合には,α(n)をAckermann関数の逆関数としたとき,O(n2^<O(α(n))>logn)時間で最大個数の移動体を巡回するアルゴリズムが存在することを2002年度冬のLAシンポジウム/EATCS Japan Chapter Workshopにおいて発表した.
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