研究概要 |
位相限定相関法は,周波数領域における画像の位相成分のみを用いた相関関数により画像レジストレーションを行う手法である.本研究では,主に,この高精度化と実験による性能評価を行った.検討した高精度化手法は,以下の4点である. (i)時系列画像の平均画像を用いて入力画像のS/N比を向上させることによる高精度化手法 (ii)入力画像に窓関数を適用してから周波数領域に変換することにより,2次元離散フーリエ変換の循環性質による誤差を抑制する手法 (iii)周波数領域にて計算される位相限定合成に対して低域通過形フィルタを適用し,信頼性の低い周波数領域(データ)をカットすることにより,高精度化を図る手法 (iv)空間領域でゼロ詰めを行うことにより,周波数領域での分解能を向上させる(稠密化)ことによる高精度化 これらの高精度化について,実験によりその効果を確認した.i)〜iii)に関しては,平行移動量,回転量および拡大縮小率推定のいずれの場合も,すべてを組み合わせることにより最も性能向上が見られるが,特に,ii)の効果が大きいことが分かった.また,i)とiii)は単独で用いた場合,ほとんど効果が見られないかあるいは性能が劣化する.しかしながら,組み合わせて用いることにより相乗的に効果が現れる.iv)に関しては,回転量および拡大縮小率推定の場合に効果が大きい. また,性能評価の結果,位相限定相関法に基づく画像レジストレーション精度は,Root mean square (RMS)誤差で評価した場合,平行移動量が0.0037[ピクセル],回転量が0.0110[°],拡大縮小率が1.29E-4[スケールファクタ]であることが明らかとなった.今後,更なる高精度化を検討するとともに,工業用センサ等への応用を検討中である.
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