研究概要 |
本年度は多角形の集合演算で精度保証を行うために必要となるデータ構造・基本演算について検討を行った.入力誤差の存在を仮定した場合,入力された図形データ自身に矛盾が含まれる.このため,入力データ中の矛盾を取り除くための正規化処理について検討を行い,平面走査法によって矛盾を取り除く手法を考案した. 計算結果の精度保証を有効に行うには,誤差の過大評価を避けることがポイントとなる.従来,頂点・線分など個々の図形要素に対して精度属性を持たせる手法が知られている.しかし,この方法を多角形の集合演算に用いた場合は誤差の過大評価が発生しやすい.さらには精度属性を持った図形要素同士は相対的な位置関係が明確に定まらないため,図形の位置関係が明確に定まるものとして設計された幾何アルゴリズムを適用するのは困難である. 安定して動作する幾何アルゴリズムを設計するには図形要素間の位置関係が明確に定まることが不可欠であるという観点から,多角形の各図形要素に精度属性を持たせて間接的に精度保証を行うのではなく,精度保証された多角形が表す境界を明示的に求めるという手法について基礎検討を行った.この手法では,図形要素の位置が明確に定まることから安定した幾何アルゴリズムを設計することが可能となり,また誤差の過大評価を避けられることも分かった. 多角形の集合演算は通常何回も反復して行われるが,反復計算において図形の位置関係を正確に求め続けるには多大な計算コストを要する.計算コストの上昇を抑える一つの方法として,集合演算の途中で新たに出現する線分同士の交点を丸めることで計算ビット長を抑える方式について検討を行った.また,反復反射計算を題材に反復幾何計算における計算コスト削減法の検討を行い,図形の規則性を用いることで反復計算のコストを削減できることを示した. 本年度は反復反射計算についてのみ発表を行ったが,その他のものについても順次とりまとめ次第発表する予定である.
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