本研究は、実写映像を使って、三次元形状をモデル化し、動的な環境下における変形過程のシミュレーションを、映像ベースで行なうことを目指している。研究計画としては、(1)三次元形状の変形過程を計測するためのシステムの設計と構築、(2)変形過程を支配している制約条件や形状固有の性質を抽出するためのアルゴリズムの開発、(3)抽出された種々の制約条件や性質に基づく変形過程の再現、の三つのフェーズから構成されるものを考えている。本年度は、このうちの(1)に主眼を置いて研究を進めた。 具体的には、4台のカメラと4台のPC、1台のワークステーションから構成される計測システムを構築した。このシステムは、4つのカメラ画像から、ステレオ視等の原理を使って、三次元形状のポリゴンモデルの時系列データを得るためのものである。観葉植物等を対象とした計測実験では、風力を加えた状況下での形状の変形過程を、部分的にリアルタイムで捉えることに成功した。ここで、部分的にとしたのは、二つ以上のカメラで捉えられた部分のポリゴンモデルは得られているものの、一つのカメラでしか捉えられなかった部分や、カメラからは死角にあたる部分については、データが得られていないためである。これらについては、(2)の研究を進めていく過程で、解消してくことを目指している。 (2)のフェーズでは、時系列データの中で、形状の変化を追跡することが必要になる。これには、隣接する時間フレームにおける形状同士の対応関係を見つけることが必要になるが、このためのアルゴリズムを開発する過程で、三次元形状の類似性判定にも活用できる方法が得られた。平成15年度は、こうした成果を踏まえ、(2)と(3)を中心に研究を展開していく予定である。
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