直交行列による行列の相似変換あるいは合同変換を行う勾配力学系を、直交行列以外の行列に拡張する方法を提案した。コスト関数がどのような関数であってもこのような拡張が行えるような、一般式を導出した。 直交行列だけを考えている場合は、行列の各成分に関しては、相似変換と合同変換で差が生じない。しかし、変換行列を直交行列以外の行列に拡張すると、相似変換と合同変換で行列の各成分に差が生じる。一般的に、変換しようとしている対称行列が表している物理的実体が、1階反変1階共変テンソルである場合は相似変換が適用され、2階共変テンソルである場合は合同変換が適用される。したがって、変換行列が直交行列の場合はこれらの変換を行う力学系の一般式も共通のものひとつで済むが、変換行列が直交行列以外の行列の場合は、掃除変換を行う力学系の一般式と、合同変換を行う力学系の一般式がそれぞれ別々に必要になる。これらの相似変換を行う勾配力学系の一般式と、合同変換を行う勾配力学系の一般式をそれぞれ導出した。 また、これらの一般式から導出できる力学系の例として、実際的な問題解決に応用できるものを提案した。直交行列以外の行列による相似変換を行う力学系の例としては、非対称行列の右上三角化を行う力学系を導出した。直交行列以外の行列による合同変換を行う力学系の例としては、直交行列以外の行列により与えられた複数の行列の同時対角化を行う力学系を導出した。
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