研究概要 |
本年度は,実用レベルの形状認識システムを実現するために,主に次の二項目に関して検討を進めた。 (1)カメラ視点に依存することのない,高速な任意形状認識手法を確立する。 (2)不連続輪郭線画像から,高精度に,かつ安定して接線情報を抽出するための手法を開発する。 まず(1)については,既に我々が開発済みのアフィン変換に不変な任意図形検出アルゴリズムについて,多角的な評価実験を実施した。その結果,(a)長方形のような平行線をもつ図形を対象とした場合には処理時間が膨大にかかる,(b)平行な接線対を持たない図形は検出できない,という問題点を明らかにした。これらを踏まえ,本年度は,認識対象を多角形近似図形に限定して処理すべき輪郭点数を減らし,大幅に計算時間を短縮した形の新しい図形認識アルゴリズムを開発した。これによって上記問題点(a)(b)に対する効果的な対処が可能になったとともに,(透視変換の近似解法という意味での)カメラ視点に依存しない,高速な形状認識システムを実現することができたと考えている。 そして(2)については,(1)で開発した認識アルゴリズムのロバスト化,及び更なる適用範囲の拡大を目的として,不連続輪郭線画像から高精度に接線情報を抽出するための手法について検討を進めた。具体的には,輪郭点列に対して円や放物線を当てはめる手法とM推定法(重み付き最小二乗法)とをそれぞれ組み合わせた手法を新たに考案した。現在,理論的検討についてはほぼ終了しており,インプリメント/実験による評価を進めている段階である。この手法の確立によって,(a)図形の一部が隠されているような場合,(b)図形に微妙な歪み変形が含まれている場合,などへの対処も可能と考えられ,加えてカメラ校正などの煩雑な作業も不要になると考えられるので,本システムの有用性をより高められると期待できる。以上の事項は次年度以降の継続検討課題である。 今後は,本年度の成果をベースとして認識システム全体の低価格実装に取り組み,本システムの一層の実利用化を図っていきたいと考えている。
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