研究概要 |
初期視覚モデルや注意視モデルはこれまでにも多数提案されているが,網膜・皮質の空間不均一性,および初期視覚特性の両方を考慮したモデルはない.本年度の研究では上記の特性を考慮したモデルを構築した.具体的な成果は以下の通りである. 《初期視覚特性》 1.初期視覚特性であるコントラスト感度曲線は、複数の空間周波数チャネルで記述されるという多重チャネル性に着目. 2.各チャネルの空間周波数特性は,前シナプスの空間分布がLoG関数(Laplacian of Gaussian:正規分布の2階微分)でモデル化される初期視覚細胞の空間周波数特性と一致することを示唆. 3.2.より初期視覚の空間周波数特性は,スケール軸を離散化したスケールスペースで記述できることを示した. 《網膜・皮質の不均一性》 4.中心窩では最も解像度が高く,周辺野では逆に解像度が低いという網膜・皮質0)空間不均一性に着目. 5.4.の特性は空間軸を離散化したスケールスペースで記述できることを示した. 《本研究で得られた新しい初期視覚モデル》 上記4.と5.により,初期視覚特性はスケール軸と空間軸が共に離散化されたスケールスペースで記述できることを示し,これを計算原理として初期視覚モデルを構築した.構築した新しいモデルは神経生理学・認知心理学・信号解析学の知見を取り入れることで超パラメータが無いモデルとなり,特性の解析や動作の意味付け,また計算機への実装が容易という特徴を持つ. 《本研究で得られた新しい注意視モデル》 これまでの注意視移動モデルは注視範囲について言及していないが,視覚情報処理モデルを構築するには注視範囲も適切に計算する必要がある.そこで上記の初期視覚モデルを基礎とした注意視モデルを構築し,計算機シミュレーションを行なった.注視位置が物体の中心位置へ動き,注視範用が物体の大きさに一致するという所望の結果が得られた.
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