研究概要 |
本年度は静止刺激に対する輪郭統合知覚の脳内神経機構について解き明かすべく心理実験に取り組んだ.2次元の刺激に対しては方位選択性細胞の受容野位置・最適方位がcolinearに配置されるもの同士の間の興奮性結合によって滑らかな輪郭が強く知覚されることが示されている.しかし通常我々が目にする光景は3次元であり,輪郭統合の機能について詳しく調べるには,両眼視差を含む3次元的な輪郭刺激を用いる必要がある.しかし単純に2次元の滑らかな輪郭に視差を付けても,通常その左右眼各2次元画像内でも輪郭は滑らかなものとなるので,このような刺激を用いて実験しても,その結果が2次元的な輪郭統合機構によるものか,3次元的な機構によるものかが判別できない.そこで本研究では,(1)左右眼各画像では全ての線分要素がcolinearに配置されており,両眼画像を融合することで初めて奥行方向のcolinearityの有無が区別されるような刺激,(2)左右眼各画像内には輪郭知覚の手掛かりが無く,両眼画像を融合することで初めて3次元的輪郭が生じるような刺激の2種類を考えた.(1)の刺激として水平方向に一列に並んだ視差・視差勾配付き水平方位ガボール・パッチ群を考え,奥行次元でcolinearな輪郭とそうでない輪郭との間のコントラスト検出閾を測定する.一般のPC用グラフックカードでは階調表示の精度が低すぎるので,Pelli&Zhang(1991)の提案する12bit階調表示化アダプタを自作し用いた.予備実験ではパッチが奥行方向に滑らかに配置される場合のほうが閾値が下がる傾向が見られる.また(2)の実験としてRDSによる3次元輪郭に対するsaliency測定を考えた.こちらも同様な傾向が見られる.本研究を進めてゆく上で,輪郭に対する図の側の領域を特定するモデルに関するアイディアが得られ,こちらでも成果が出ている.
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