研究概要 |
脳における視覚情報処理において重要な知覚体制化のうち,本研究では輪郭統合,運動統合を中心に,図地分離も含めて,それらのメカニズムについて研究を行った. 輪郭統合は視野内の局所線分要素群を滑らかにつなぎ合わせて大域的な輪郭を知覚する過程である.本研究では両眼視差の与えられた3次元的な線分要素を用いたpath-paradigmベースの心理物理実験を行った.その結果,3次元空間中において線分群が共線的に配置される場合のほうがそうでない場合よりsaliencyが高いことがわかった.この結果は脳内には3次元的な輪郭統合の機構が備わっていることを示唆する. 運動統合は視野内の局所的な動き情報を統合して,物体全体・視野全体の大域的な動きを知覚するプロセスである.本研究では視野内の各局所領域内に異なる動きを持つドットのペアを含ませるLPD刺激に対する知覚が運動視の処理系のどの段階で行われているかを調べた.その結果,まずLPD刺激中の運動が統合された後,それらを大域的に統合するプロセスが備わることが示唆された. 図地分離は視野内のどの領域が空間的に手前に位置する物体領域で,どの領域が相対的に奥に広がる背景領域かを識別するプロセスであり,あらゆる視知覚現象に関係する重要なものである.本研究では図地分離と輪郭統合の両プロセス間の関係について,図としての属性を有する小三角形の辺を刺激要素としたpath-paradigmベースの実験を行って調べた.その結果,図の属性を有する線分要素同士を統合し知覚できること,またその際に線分に対する図の側が統一されていることが必要であることがわかった.これらの結果は図地分離の後に輪郭統合が行われるという処理の流れも存在することを示す. これらの他にもパターン認識と図地分離の関係や対称性の知覚に関するモデル研究の成果も上がっている.
|