研究概要 |
非加法的情報理論において基本的な情報量であるサリスエントロピーの一意性定理を証明し,いくつかの論文発表などをおこなった.これは,シャノンの情報理論においてシャンンエントロピーが基本的な情報量であり,その一意性定理が,シャノン-ヒンチンの公理系として知られているが,その一般化である.すでに本研究以前に知られていたサリスエントロピーの一意性定理の問題点も,本研究の結果により解決された.この結果により,サリスエントロピーを正規化することにより,加法性の形が保存されることもわかった. この結果に基づき,正規化されたサリスエントロピーをもとに,サリス相互情報量を導き,これを独立成分分析における独立性の基準に用いた.その結果,シャノン相互情報量を用いた従来の独立成分分析では分離できなかった観測画像に対しても,本提案手法により,分離に成功することがわかった.また,収束の速度も,より速くなるという効果もいくつかのシミュレーションにより確認できた.これら有効性は,もとの互いに独立な情報源が,シャノンエントロピーのような加法的な関係に従うのではなく,サリスエントロピーのような非加法的な関係に従うことに起因していることがわかった. また,このさらなる応用として,独立成分分析を超音波エコー情報による肝臓の診断に応用し,大変興味深い結果を得た.具体的には,従来,肝臓の診断は,超音波診断装置から得られる画像を医師の経験や主観に基づいて診断していたが,本研究では,正常な肝臓の超音波エコーの振幅がレイリー分布に従うことを用いて,レイリー分布に従わない成分(病変の起因となる成分)を独立成分分析により抽出するという試みで,その成分の特定に納得いく結果を得た.この研究に関しては,より精密化をはかるため,来年度以降も引き続き行う予定である.
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