研究概要 |
本研究では,連想に基づく高次情報処理システムの実現に向けて,より適切に脳の連想記憶機能を模倣する連想メモリを構築し,ハードウェアに実装することを目的としている.本年度は以下の研究を行った. 1.時系列情報の記憶・連想の実現 既に提案している自己組織化マップ連想メモリでは時間変化のない静的な情報のみしか扱えなかった.本研究では,自己組織化マップ連想メモリのマップ上のニューロンに,内部状態が時間とともに減衰していく機能を組み込んだ.また,入力情報だけでなくこの内部状態も考慮してマップ上の勝ちニューロンを選択する方法を開発した.これにより,重複が何度も繰り返される複雑な時系列情報の学習・想起が行えるようになることを明らかにした.また,複数の類似した時系列情報に対して良好な分別能力を有すること,優れた耐雑音性を有することを明らかにした.この他,この課題に関する別のアプローチとして,時間情報を含んだエピソード記憶の形成に深く関係していると考えられている生体の海馬を模倣した神経回路モデルの研究を行った. 2.形態学的連想記憶の学習法 形態学的連想記憶は核パターンと呼ばれる中間パターンを介して学習を行うことで,大記憶容量の実用的な連想メモリとなることが知られているが,これまでは適切な核パターンの構成法がなかった.本研究では,形態学的連想記憶の想起特性を詳細に調べることにより,高速に核パターンを構成する学習法を開発した.計算機シミュレーションの結果から,本手法は従来の試行錯誤的な手法に比べ,100万倍以上高速に学習可能であることが分かった.さらに,1つの学習パターンに対して複数の核パターンを用いる学習・想起法の開発を行い,耐雑音性が大きく改善されることを明らかにした.
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