本研究は、進化計算法における系の構成要素のミクロレベルでの相互作用から生じる系全体でのマクロレベルの秩序形成という創発現象の性質を明らかにすることを目的としている。今年度は、前年度に得られた理論的基礎を発展させるとともに、実験面においても各種のシミュレーション実験による検証を行った。主たる成果を以下に列挙する。 1.遺伝的ブースティング法と決定木アルゴリズムの理論的比較 前年度に提案した遺伝的ブースティング法の理論的基礎について考察を進めた。その際に、比較的類似性の高い手法であるC4.5決定木アルゴリズムとの比較を行い、両者の判別面形成における差異について考察した。具体的には、遺伝的ブースティング法においては、進化計算法における系の構成要素のミクロレベルでの相互作用を考慮したパターン分類を実行していることを示した。それに対して、決定木アルゴリズムにおいては、このような相互作用を一切考慮していないことを明らかにした。 2.ベンチマーク問題集を用いた性能検証 パターン分類における標準的なテスト問題であるUCIベンチマークを使用して、提案手法の性能検証を実施した。検証実験に際しては、上で述べた決定木アルゴリズムとの比較を行うことによって、上記理論考察の妥当性について検証した。その結果、実施した実験の全てにおいて提案手法は決定木手法を上回る性能を得ることができた。このことから上記理論考察の妥当性を確認することができた。なお、本実験においては、本補助金によって導入したコンピュータを使用した。
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