研究概要 |
本年度は,医療データベースからの知識獲得法として,(1)欠損値が存在する時系列臨床検査データをより長期間な観点から比較する可変スケールマッチング技術,(2)比較結果に基づく時系列データのクラスタリング技術,(3)医療画像からの関心領域抽出技術,の3つの要素技術について開発を進めた。 まず,(1)について,2次元輪郭の認識で活用されてきた多重スケールマッチングを基礎とし,類似度指標およびマッチング手続きに拡張を加えることで1次元時系列を多重スケール比較する手法を開発した。これにより,データの粒度に応じて部分的に視野スケールを変化させながら系列を比較することを可能とした。 この方法による比較の結果導出される系列間相違度は相対的相違度であり,三角不等式を必ずしも満たさないため,重心等の幾何的尺度を用いず,識別不能度により対象の集積度を評価し類型化するラフクラスタリングを(2)として提案した。(1)および(2)を組み合わせ,時系列臨床検査アータの比較分類法を構築し,慢性疾患データベースに適用したところ,類似した病態遷移をたどった患者の検査データからなるクラスタが生成され,提案法により疾患を特徴づける推移パターンを抽出し得ることが示された。 一方,(3)の検査画像からの知識獲得法として・ラフ集合による関心領域表現法を提案した。これは,データベースあるいは専門家から事前に獲得した知識が,新たな入力画像における関心領域を区分するに不十分,あるいは不正確であった場合,その暖昧さを「境界領域」として結果上に表現するものである。本方法を従来我々が開発してきたファジイ推論に基づく領域抽出法と組み合わせることで,抽出結果の正しさを評価し,メンバーシップ関数の自動調整を行うシステムを構築していく予定である。
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