研究概要 |
平成14年度においては,実物体の反射特性を再現する仮想光学環境の実現に向け,主に反射特性の計測・解析を行った.ハロゲンライトの位置を計算機から自由に制御できる計測装置を試作し,様々な反射特性を持つ物体を対象として多数の画像を撮影した.双方向性反射分布関数(BRDF)は4パラメータの関数であり,物体表面上の各点ごとにBRDFを保持しておくと記憶容量が膨大となるため,そのままでは取り扱いが容易ではない.そこで,パラメータ数を3もしくは2と減らすことにより,再現性は若干劣るものの,記憶容量を大幅に減少できることを確認した.実際に,陶器(備前焼)の反射特性を2パラメータのBRDFとして学習し,それを白色石膏の壷の上で再現するシステムを試作した. また,対象物体の表面上で生じる光学現象を詳細に解析する手法も開発した.光源方向を様々に変化させながら対象物体を撮影し,拡散反射成分のみを持つ画像に変換する新しい方法を開発した.変換前後の画素値を比較することで,拡散反射・鏡面反射・attached shadow・cast shadowの4種類の光学現象に分類することが可能となった.従来までの変換方法では,撮影画像中の大部分で影となる画素は,反射率が低いのか影となるのか区別が容易ではなかったが,提案手法では光学現象の分類基準を利用して拡散反射成分に変換するため,より安定な解析が可能となった. 以上をまとめると,実物体の表面上で観測される光学現象を2パラメータのBRDFとして計測する技術,光学現象を4種類に分類する技術,得られた結果を仮想光学環境に応用する技術を開発した.
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