本研究課題に関する本年度の研究実績は以下の通りである。 1.当研究室で自主研究として継続的に取り組んできた弾性マッチング法(区分線形2次元ワープ法)を利用し、手書きによる文字の変形を自動採集した。なお対象文字種としては、解析の容易な英語大文字(ETL6文字データベース)を選定した。 2.採集した変形に対する主成分分析により、各文字種固有の変形特性を抽出した。その結果、通常よく見られるような変形(例えばアルファベット「A」ついては全体的な傾き変形や水平ストロークの上下動など)が、固有変形として適切に自動抽出されることが判明した。 3.弾性マッチングに基づく認識系において、合わせ過ぎ(過変形)による誤認識を回避することを目的とした、固有変形の利用形態を検討した。具体的には、弾性マッチング処理の事後評価において固有変形を利用することを提案し、実装した。 4.固有変形に基づく事後評価を付加した認識系について実際に認識実験を行ったところ、付加しない場合に比較して、非常に高い認識率が得られることを確認した。具体的には、誤認識数を2/3程度まで低減することに成功した。 5.認識結果を定量的および定性的に評価した。その結果、固有変形を認識処理の事後評価において利用することで、当初の目的とするところの過変形による誤認識の低減効果が得られることを確認した。 6.適宜国内外での発表を行った。具体的な事例については、次項「研究発表」において示す。
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