研究概要 |
本研究課題に関する本年度の研究実績は以下の通りである. 1.固有変形(各文字種において,頻繁に起こる変形の方向)の利用形態について,これまでの事後処理における利用を発展させ,弾性マッチングの過程に直接埋め込んで利用する形態を開発した.具体的には,ある文字種の変形パターンを,その文字種の固有変形の線形加重和により表現したモデルを生成し,その重みを制御することで文字パターン間の最適整合を図る方法を定式化した. 2.この新しい利用形態を用いて認識系を実現する際には,上述の重みの非線形最適化問題を解く必要がある.本年度はその最適化技法について,調査および実装を行った.具体的には線形近似解法と共役勾配法の2通りを採用した.前者は最適化問題の近似を伴うが,その近似解を解析解として求めることができる.後者はそうした近似を行わず,最適化問題を直接解こうとするものであるが,解は数値的に求めることになる. 3.手書き英語大文字(26文字種)の認識実験を行い,その効果を確認した.特に共役勾配法を用いた結果から,固有変形を利用した場合の性能限界に関する知見を得た. 4.以上のオフライン型(文字は画像として認識する枠組み)に加え,オンライン型(文字を筆点の時系列として認識する枠組み)について,固有変形の利用の検討を開始した.本年度は,オンライン型文字における固有変形の定義,およびその推定式の導出,ならびに認識における利用形態を検討した.さらに,実際にオンライン型手書き数字パターンを対象として,固有変形推定実験ならびに認識実験も行い,その有用性を確認した. 5.適宜国内外での発表を行った。具体的な事例については裏面の「研究発表」に示す.
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