研究概要 |
本研究課題に関する本年度の研究実績は以下の通りである. 1.タブレット等を介して時系列データとして入力される,いわゆるオンライン手書き文字データに対して,本手法(固有変形法)の適用を試みた.これに伴い,認識問題の新たな定式化ならびにアルゴリズムの開発を行った. 2.上記1のアルゴリズムをさらに発展させ,オンライン文字認識問題を,パターン認識の分野で広く用いられているベイズ識別の枠組みにおいて定式化することに成功した.従来,ベイズ識別は固定次元数のパターンを対象としていた.このため,筆記速度等によりパターン次元数が変動するオンライン文字はその対象とされていなかった.これに対し,本研究では弾性マッチングによりパターン次元数の正規化処理を行なうことで,ベイズ識別理論の適用を可能にした. 3.オンライン手書き文字ならびにオフライン手書き文字(スキャナ等で画像として入力される文字データ)の代表パターン選定法として,弾性マッチングとクラスタリング法を組み合わせた手法を開発・実装した.それにより得られた各カテゴリの代表パターンを辞書パターンとして認識実験において利用した. 4.以上の技術をすべて利用し,実際のオンライン文字データの認識実験を行なった.実験には,世界的に公開されているデータベース(UNIPEN)を利用した.このデータベース中の文字は非常に乱雑に書かれたものが多いということで知られているが,我々の方法では,約98%の認識率を達成した.これは当分野で最も権威ある学術雑誌に最近掲載された関連論文の認識率を上回るものであった. 5.本手法(固有変形法)と,パターン認識で頻繁に利用される部分空間法との併用形態を幾つか検討し,その問題点を把握した. 6.適宜国内外での発表を行なった(雑誌論文6件,国際会議4件,紀要2件,研究会9件,他に全国大会,支部大会など多数).
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