まず、進化型計算のひとつであるGSAを仮想的なグリッド環境上に実装した。GSAは、親個体および子個体からなる家族を一世代につき三家族用いるが、集団の世代交代および探索履歴の管理等をマスターホストにて実行し、各家族内の操作をスレーブホストにて実行するように設計した。実装はJava RMIにより行い、家族内の操作は簡略化しスリープにより一定の計算時間を消費するようにした。クラスファイルの転送やライブラリの起動には、グリッドの標準的なミドルウェアであるglobusのglobus-url-copyやglobus-job-runを利用した。マスターホストとスレーブホストが同一であり通信による遅延を無視することのできる仮想的なグリッド環境上での実験により、ホスト数にほぼ比例した計算時間の短縮が可能であることを確認した。また、クラスファイルの転送には一定の時間を消費するが、スレーブホストでの計算時間が十分に大きい場合には無視できる程度であることを確認した。次に、「特定領域研究Cゲノム情報科学(代表:高木利久)ゲノム情報科学高速化委員会(委員長:小長谷明彦)GRID環境構築ワーキンググループ」により構築され、実際に稼動しているグリッド環境であるOBIGrid上にて同様の実験を行った。仮想的なグリッド環境と比べ、通信遅延による計算時間の増大は発生するものの、単一計算機における進化型計算と比べ、計算時間の短縮が可能であることを確認した。さらに、ベンチマーク的な最適化問題のひとつであるNK-model問題に提案手法を応用した。比較対象とした並列型シミュレーテッドアニーリングに比べ、高い性能を示し、また、スレーブホスト数にほぼ比例した計算時間の短縮効果が確認された。なお、これらの成果は5件の口頭発表および講演資料にて公表している。
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