研究概要 |
研究実績の概要 心疾患の診断では,心臓(特に心筋)の動きを診断材料とするため,心筋を正しく捉え,かつ変位または動きを高精度に算出することが要求される.上記の診断に際し,意図的にMR画像を空間的に変調させたダギングMRI(タグつきMR画像)が一般的に利用される。 本年度,上記画像の解析に関して,以下の二点に関する研究を行い成果を収めた。 1)高速な領域分割アルゴリズムの提案 機能毎に心筋の各部位を分割し,その動きを評価/診断するに際し,心筋領域を正確に抽出することが必要である.特に心房部分と心筋部分の分類,心筋とその外部との正確な分離は非常に重要である.本研究では,上記問題に対して画素間の相関を考慮した,高速な領域抽出手法を提案した.ビリーフプロパゲーションと呼ばれる確率伝搬法を用いた高速解法は,領域としての画素間の相関を考慮したモデルに対して高速に解くことが可能であり,本研究では上記を実装し,その処理時間を比較した.その結果,従来の処理時間の約半分の時間で処理が可能であることを示し,同時にその抽出される領域自身は従来法とほとんど変わらない領域を抽出することができた.これはシネMRI画像に適用可能な心筋抽出手法として,正確で高速な領域抽出を可能にする.同時に,一般に用いられる二次元のMRI画像だけでなく,三次元のシネMRI画像に対しても有効な手法であり,汎用的な手法として提案した。 2)高精度な変位算出の提案 動きを算出するにあたり,従来タギング画像を用いオプティカルフローと呼ばれる輝度やタグの位相といった特徴の画像上での流れを動きと見なした手法が一般に用いられていた.これらの方法に対して,本研究ではタギング画像の縞の特徴を利用した高精度な変位算出手法を提案した.三次元形状を測定する際に用いられるモアレ解析をタギング画像に適用し,t=0の時刻から変位を高精度に算出するための方法を定式化した.その結果,従来法に対して約1/4のRMSEにより変位を算出可能にした.同時に,モアレ縞の算出の際に求められる縞の振幅が,タグの減衰の程度を量的に示していることを定式化し,その振幅に応じた算出変位の信頼度として適用可能であることを定式化した.さらに,縞の減衰の程度に応じて心筋領域を抽出する手法を行い,心筋部分などの組織部分と血流部分とに分類することが可能であることを実験から確認した.
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