平成14年度は、不完全な実数値データしか与えられない場合の実数値関数の帰納推論について研究を行った。専門家から、実際に実験や観測を行う際に、解析に充分な数値データを得ることができない場合もあるとの指摘を受けている。また、与えられた数値データには、入力する際にある程度のエラーが含まれていると思われる。このように、数値データが満足に与えられない場合でも解析できるように、誤差を含む実数値データからの学習方式を再構築し、実数値関数の帰納推論について、仮説変更と例外を許す成功基準について研究を行った。 特に、従来からよく知られている自然数の帰納推論の成功基準を拡張して、帰納的実数値関数の帰納推論の成功基準を提案し、その成功基準の比較を行った。その結果、仮説の変更回数に制限がある帰納的実数値関数の帰納推論は、自然数上の帰納推論の場合の自然な拡張であることがわかった。しかしながら、例外を許す帰納的実数値関数の帰納推論において、例外とは、ある有限の幅を持つ有限個の有利区間として表される。このため、例外となる区間の個数だけでなく、その区間の幅の長さの違いが、成功基準の違いに影響を及ぼすという結果を得た。更に、推論機械が、例外とする区間の幅の長さが事前にわかっている場合と、そうでない場合では、本質的に推論可能性に違いがあることを示した。
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