平成15年度は、誤差を含む実数値データからの実数値関数の帰納推論における論駁推論可能性と信頼推論可能性についての研究を行った。実数値データからの学習を実行する際に、実際にデータが表す関数そのものを推論機械が学習できることが、実数値関数の学習の中で最も良い場合である。しかしながら、学習目標である実数値関数が仮説空間の中に存在していない場合もあり得る。そのような場合、従来の学習モデルの枠組みでは、取り扱うことができない。そこで、学習対象である実数値関数が仮説空間の中に存在していない場合、推論機械がその仮説空間そのものを論駁し、学習することができないことを有限時間で示す実数値関数の学習モデルとして、論駁推論を構築し、論駁推論可能な実数値関数のクラスを同定した。同様に、学習対象である実数値関数が仮説空間の中に存在しない場合、推論機械が出力する仮説の列が無限に発散し、推論機械が出力する仮説の列が収束した場合にのみ、その仮説に信頼をおくことができる実数値関数の学習モデルとして、信頼推論を構築し、信頼推論可能な実数値関数のクラスを同定した。それら二つの帰納推論の推論基準と、帰納的実数値関数の既存の推論基準である極限同定の成功基準、有限推論の成功基準、および枚挙推論の成功基準と比較を行い、相互関係を明らかにした。更に、論駁推論可能な2つのクラスの和集合と、信頼推論可能な2つのクラスの和集合も、それぞれ、論駁推論可能、信頼推論可能であることを示した。
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