研究概要 |
本研究では,人間の感性にはたらきかける情報(感性情報)として音楽を考え,人間に「やすらぎ」を与えるサウンドを計算機で自動的に生成するシステムを開発することを目的としている.生体の生理活動に伴い発生する信号(心電,脈波,脳波など)にはカオス的な特徴が存在することが知られている.本研究では,生体から抽出したカオス特徴量に基づいた,癒しを目的としたバイオフィードバックの枠組みを提案する. 本年度の研究では,人体が発信するカオス特徴量の変化をサウンド生成・変更規則へ写像するための方法論について検討した.まず,音楽を傾聴したとき人間が抱く感性の定量化について検討し,音楽を構成する要素,旋律(メロディ),和音(コード),音色,リズムなどの変化が人間の感性にどのように影響を与えるかについて,音楽傾聴時の脳波を測定し,脳波のアルファ波の活動特性を解析することにより考察した.これに併行して,生体信号からカオス特徴量を取り出す方法を検討し,さらに,指定したカオス特徴量を有するサウンドを生成するためのカオスサウンド系列発生器を開発した.カオス特徴量の評価にはリアプノフ指数を用いた.次に本サウンド系列発生器で被験者の生体信号(脈波)から生成したカオスサウンド(マイサウンド)を,一次元セルオートマトンをもちいて数学的に発生させたカオス系列を用いて生成したサウンドと比較し,音楽傾聴時のリラクゼーション効果に優位性があることを確認した.本研究の成果の一部を特許出願した「サウンド生成方法,及び,コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」(特願2002-383239).
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