研究概要 |
IT野にはヒトやサルの顔認識ニューロンが存在し,これは次のような挙動をすることが生理学者によって発見された.まずサルに,複数のヒトやサルの顔を学習させる.続いて,このサルに既に学習したAさんの顔を見せる.すると最初に,ヒトをコードしている全ニューロンが発火し,その後,Aさんの顔をコードしているニューロンだけが発火を持続し,それ以外は発火しなくなる.このとき,サルをコードしているニューロンの発火は殆ど見られない.っまり,まず物体の大まかな認識(ヒトかサルかのグループ認識)が行われ,続いて,それが誰なのかという詳細な認識が時間を追って行われるということが分かってきたのである. 本研究者は,この想起ダイナミクスが連想記憶モデルを用いて説明できるのではないかと考えた.そこで,サルが学習した顔の特徴を取り入れた学習パターンを作成し,これを連想記憶モデルに学習させて想起安定性を統計力学によって解析した.顔の特徴を取り入れるために,同一グルーブに属する顔パターンは互いに似ているため相関が強いもの仮定し,学習パターン同士にも相関の違い取り入れてグループ化したものを作成した.これを学習させた連想記憶モデルで,想起完了後の平衡状態を調べた結果,学習パターンが想起できることは勿論であるが,同一グループの学習パターン全てをOR処理した混合状態も安定に想起できることを確認した.この混合状態は,生理学実験で観測されている大まかな認識を行っている過程の発火状態と類似している.次に,相関のある記憶パターンのいくつかで生成したOR混合状態の安定性についても調べた.その結果,相関のある記憶パターン全てを混合した混合状態は安定であるが,1つでも記憶パターンが抜けると,それらで生成したOR混合状態は不安定になることが分かった.つまり,かならず相関のある記憶パターン(同一分類の物体を表している記憶パターン)同士はすべてが混ざり合って1つの混合状態を形成しやすいことが分かった.以上より,混合状態は大まかな分類を表現している概念情報であると考えられる.次年度以降は,ダイナミクスについて詳しく調べる.
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