前年度は、オントロジー記述に適した論理的な表現とその推論を実現するために、(i)構造的ソートを導入した順序ソート論理と(ii)記述論理と論理プログラミングの融合を形式化した。平成15年度は、オントロジーを構築する概念階層の多様性について分析し、その多様性から生じる難しさを扱う方法論を提案した。研究成果の詳細は、以下の通りである。 オントロジーを実際に構築・運用することを想定した場合、概念階層はどのような記述で表現され、それはどうすれば安全な知識として保障されるかを考えなければならない。論理型言語におけるクラス概念は、個体の集まりを示しており、クラス間の相関関係によってクラス概念の分類・構造を記述することができる。本研究では、情報の複雑な意味を記述するために、従来のクラス表現によってのみ表されていた概念とその概念階層を拡張した。具体的には、文字情報として記述されたクラス概念が、個体、個体の集合、指示語、形容詞的表現、および動詞的表現などの異なった役割をもつことを考慮した表現方法を論理型言語に取り入れた。したがって、情報を文字列と見なす一方で、情報の役割から生じる概念の意味を内包的に表すことにより、情報やオントロジーの多様性に対処できるようになった。実際、各文字列に複数の役割を持たせて、その文字情報の概念階層を記述する言語と手順を形式的に与えるとともに、情報の多様性から生じる矛盾した概念階層を許さないような安全な構築方法を提案した。
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