研究概要 |
本研究は,知的人工物と人間との日常的な生活環境の中での自然なコミュニケーション実現を目指し,知的人工物の知性と身体性に対する人間の認知的姿勢に基づいた適切なコミュニケーション環境モデルを提案することを目的としている. 平成15年度は,日常的な利用形態におけるコンピュータや擬人化エージェントに対して,それらの身体的反応がシステムのどの領域に帰属されているかということにづいて前年度までに得られた知見を踏まえた研究を行った.特に平成15年度に取り組んだ課題は次の2つである. (1)エージェントの身体像のもつ効果はいかなるものか (2)エージェントの機能はエージェントの身体性に伴うものか この課題に対して,エージェントの身体像は対人的反応を誘発する上で強力なキューとなるだけでなく,知的な機能を伴った人格的な存在としてユーザに認知されていたことが確認された.しかし,この認知はユーザに与えられる周辺情報によって、比較的容易に変更されてしまうため,特定の役割をエージェントに担わせるためにはエージェントの役割を明示的に示すことが必要になることも示唆された.このようなエージェントの柔軟なインタフェースとしての応用可能性は,今後のユビキタスネットワーク社会において有効であると考えられる.なぜならば,より一層「コンピュータ」という実態がインビジブルな状態でのコンピューティングが普及する上で,ユーザにとっての"関わりあう" 対象としてのエージェントの存在に加えて,エージェントの身体像に帰属される知性(機能)が,エージェントの仮想的な移動と共にあると認知させることも可能になるからである.
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