研究概要 |
平成14年度は,本研究で構築を目指している認知タスク分析技法の全体的な枠組みを明確にするとともに,グラフィックデザイナーの作業観察および実験を通して,作業の特徴分析ならびに分析手順の考案を行った.主な研究成果として,次のような点が挙げられる. (1)広告制作実務に携わるグラフィックデザイナーおよび関連する業務に従事する人を対象にインタビュー調査を実施し,現場におけるニーズに関する情報を整理した.その結果,次の2つの研究ニーズがあることがわかった.1つはグラフィックデザイナーの広告制作プロセスにおけるコンセプトの具現化段階において,効率的な作業プロセスに関する示唆が求められていることである.もう1つは,その段階においては経験的にはスケッチを利用することがよいと言われているが,その効果について検証してほしいというものであった. (2)広告実務に携わるグラフィックデザイナーの作業のうち,コンセプトの具現化段階について観察し,その様子を作業中の眼球運動,言語プロトコルとともに記録した.得られたデータを詳細に見ることで作業を動作およびその対象といった観点から,作業内容に対してこれを構成する単位作業に分類したこの分類に基づき,作業の内容を時系列に記述した.ここでの一連のデータ処理方法を整理することで,グラフィックデザイナーの作業内容を精緻に記録する記述方法を構築した. (3)スケッチの効果を検証するために,熟練デザイナーを用い,スケッチの有無をコントロールした広告制作実験を行った.得られたデータに対して(2)の手順に従い作業内容を記述し,それに基づき解析を行った.その結果,作業前に行うスケッチにより,続くコンセプトの具現化段階において広告のデザイン要素間での意味的なつながりに関する思考を促進する可能性を,示唆として得た.
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