研究概要 |
平成14年度は、1.相互認識を伴う意思決定状況の数理的な分析 2.意思決定に伴う社会の状態の変化に関する理論の構築 3.現実の意志決定状況の解決や主体の行動選択の支援のための計算機上のシステムの構築 を達成するために研究を行った。平成14年度は、まず、主体間の相互認識体系について、つまり、上記の1.および2.についての数理的な分析を行った。その結果、主に以下の4つの成果を得た。 1.否定的な自己評価を許容した符号付きグラフについての研究の知見を元に、社会ネットワークの安定性と社会の中での情報源の信頼性について分析した。特に、符号付きグラフの一般集群化の概念を用いて、信頼性に関して安定した社会ネットワークにおいては情報の拡散が限定的であることを証明した。 2.否定的な自己評価を許容した符号付きグラフを扱い、擬-集群化可能性の概念の拡張を行った。この拡張により、より一般的な社会状況の記述が可能となり、特に、認定投票方式を採用した代表者選択の意思決定状況に関する示唆が得られた。 3.符号付きグラフの理論における、一般擬集群化の概念とグラフの安定性の概念の間の同値性を用いて、社会ネットワークにおける情報拡散について分析した。特に、安定した社会ネットワークにおいては情報の共有が難しいことを示した。 4.社会ネットワークの安定性の概念として、社会心理学の知見を元に、H安定性とN安定性の2つを定義し、社会的主体がもつ他主体の信頼戦略としての両者の違いについて分析した。そして、H安定性を目指す社会よりはN安定性を目指す社会のほうが、情報共有の可能性の観点から優れていることを示した。 これら4つの成果は、それぞれ、1.The 6th Pacific Asia Conference on Information Systems (PACIS 2002), Tokyo, Japan, September 2-4, pp.406-413, 2002. 2.平成14年日本オペレーションズ・リサーチ学会秋季研究発表会,公立はこだて未来大学,pp.196-197, 2002年9月10-13日. 3.科学技術社会論学会第一回年次研究大会,東京大学駒場Iキャンパス,pp.95-98, 2002年11月16-17日. 4.第九回社会情報システム学シンポジウム 学術講演論文集 pp.105-110, 電気通信大学大学院情報システム学研究化棟,2003年1月29日,として口頭発表済みで、今後学術論文として、公表予定である。
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