研究概要 |
昨年度までに,『任意の製造工程において,そこでの品質特性とそれに影響を与える要因の間の因果関係を捉えるための「変動因系統図」』,および『多段階生産システムにおいて,各工程で作り込まれる半製品段階での中間特性と最終的な製品の品質特性の間の種々の因果関係をモデル化するための「特性因果グラフ」』の二つのネットワーク図をそれぞれ提案し,最終的な品質特性のばらつきを必要なレベルにまで低減するために,どの工程のどの要因を検査の対象として選択すればよいかを,これらのネットワーク図に基づいて明らかにする意思決定支援アプローチを開発した.このとき,品質特性のばらつき低減のための手段として,単に検査による要因管理だけでなく,ロバスト性向上も併せて考慮した.本年度は,昨年度までに得られたそれらの研究成果を,製品の企画や設計の段階にフィードバックすることに主眼を置いた.まず,上述のネットワーク図による分析法を応用して,最終的な製品の品質特性を,それを構成するユニットや部品の下位特性に展開することによって,製品設計の段階でロバスト性向上を適用する場合に,どのユニットや部品を対象とするべきかを明らかにする方法を与えた.また,こうしたネットワーク図による特性間の連関分析を,製品品質の向上を阻んでいる,特性間のトレードオフ関係を把握することにも利用できるようにした.さらに,そのようにして把握された数多くの技術課題を,DEMATEL法によって優先順付けするアプローチを新たに開発した.最後に,そうした技術面の制約条件と,市場からの要求品質の両面を,ファジィ理論によって定量化し,製品に具備させるべき目標品質を適切に企画するための戦略的品質企画アプローチを展開した.
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