平成14年度は各種ヒアリングを行い、福岡県ないし九州地域の産業ニーズがIT(半導体ソフト)・ナノテク(半導体ハード)及び環境・農林水産業という分野に大別されることを把握した。IT・ナノテク分野については、県下の産業支援機関やベンチャーほか各種企業に詳細なヒアリングを行い、"福岡半導体産業クラスター"の形成要因と現状、プレーヤーの将来展望を分析した。ケーススタディなど成果の一部はスタンフォード大学国際調査《Stanford Project on Regional Innovation and Entrepreneurship》福岡地域研究会報告書に掲載された。また、特にナノテク分野に関し九大研究シーズを体系化し、学内予算の配賦を受けキーセンテンス集を刊行した。 後者の環境・農林水産業分野については、経済地理的観点から広く九州・四国・中国地方の自治体・各種協同組合を対象としてアンケート調査を平成15年度に実施し、約220件の回答を得た。分析結果は関西ネットワークシステム設立総会(平成15年6月)、三重県ベンチャーセミナー及び中小企業大学校人吉校で発表した(いずれも平成15年9月)。また、ナノテク分野同様キーセンテンス集を刊行した。本アンケート調査の結果得られた知見はデータ化・理論化され、更に現在では九大知財本部における実務、また福岡県宗像市・旧玄海町からの地域振興政策の企画支援への要請にあたり、一指針として活用されるに至っている(論文準備中)。 なお本研究は当初、福岡県をモデル地域として開始されたが、研究の進展に伴い対象が拡大し、平成16年3月には福岡地域と関連の深い韓国を対象に延べ3週間の調査を実施した(科研費分は1週間、2週間は財団法人アジア太平洋センター若手研究者助成に基づく)。 今後は地域振興の為の技術移転システムに加え、それに貢献しうる人材育成の研究・実践にも注力していく方針である。
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