研究概要 |
工場レイアウトに関する従来の研究では,生産工程(職場)間の物流量が入力情報として与えられ大きな物流量がある職場間を優先的に近くに配置し,工場全体として効率的な物流システムとなるように設計を行っている.一方,工場建屋には建築構造上の様々な制約があり,物流という観点から精緻に最適化されていても,その配置案通りに実際の建屋を建築することが困難であることが多い.工場レイアウトの最適化問題を机上の空論で終わらせないためには,物流コストを最小化するだけではなく,建築上の制約を考慮した実行可能な配置案を求めることが極めて重要である.そこで本研究では物流コストのみならず工場建屋の建築制約に大きな影響を及ぼす要因を統合的に捉えたモデルを作成し,その新たなモデルの最適化を行うための解法を開発している. 今年度は,昨年度に構築した工場建屋の建築制約を考慮した新たなレイアウトモデルに対する解法を開発し,仮想的な数値データを用いることにより提案する解法の特徴や限界などを明らかにした.具体的な手順としては,単層建屋の工場を対象とした最適化アルゴリズムを開発し,工場建屋の柱の位置などの影響を受ける職場内デッドスペースの最小化と物流コストの最小化という多目的最適化問題に取り組んだ.多目的問題に対するアプローチはいろいろとあるが,本研究ではパレート最適解の探索を行い意思決定者に複数の代替案を提示できるようにした.なお,この研究成果は,(1)"柱の位置と物流コストを同時に考慮した職場配置方法の研究"および(2)"通路構造と職場内物流を考慮したレイアウト設計技法の開発"という論題で論文誌に投稿中である.
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