本年度は戦略的コミュニケーションに関する基礎的な情報収集と、状況把握のための関係者への質問及び実地調査を2回に分けて行なった。平成14年4月より、国内の文献資料を中心に、世界銀行や米国を中心とする国際開発系NGO団体等により既に実施されてきた同手法の現状分析を行なった。その後8月19日から8月31日まで、米国ワシントン・コロンビア特別区に出張し、世界銀行による同手法の実践状況に関する調査を実施した。同手法を社会開発プロジェクトに導入し実践する世界銀行開発コミュニケーション部門のキャパシティービルディング担当官Caby C. Verzosa博士にプロジェクトの実地調査の可能性を含め協力を求めた。 同博士によれば、同手法を最も進展させているのは予想されたフィリピンの社会開発プロジェクトではなく、ウガンダ共和国保健省の栄養及び幼児保育開発プロジェクトであった。報告者は同博士の進言に基づき、翌15年1月15日から2月14日までウガンダとその他、同手法を導入する社会開発プロジェクトが実施されているニジェールとペルーでの調査を行なった。 以上、調査の結果同手法に関して把握されたことは、同手法が社会における不特定多数の受益者に対し、より効果的に情報を供給し受益者自身のイニシアティブにより生活習慣を良い状態に改善しようとしていることであった。具体的には実施者が流す情報に対する受益者の反応をあらかじめ想定しながら、マス・メディアを駆使し、受益者の関心をより多く集めるという情報活動が展開されてきた。しかし多くのプロジェクトは、ウガンダのように保健衛生や成人教育の分野のものが主流であった。 今後は保健衛生や成人教育以外の様々な分野で同様の手法が実施される可能性を見出すことが必要となってくる。引き続き、本年度の調査内容を分析し同手法が導入されうる新たなる分野と期待される効果を明らかにしてゆく。
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