初年度にあたる本年は、研究活動の定量的分析を行う上での情報基盤をまず構築し、いくつかの実証的分析を試行的に行った。研究開発活動の定量的な分析を行うためには、論文や特許などのアウトプットの分析を行うことが第一に必要となる。そのため、論文の引用分析に最も使われるデータベースであるScience Citation Indexを基にして、自己引用の除去や研究分野による分布の解析、引用関係のトレースが容易にできるようにデータベースの再構築を行った。このデータを基にして、大学評価・学位授与機構が平成12年度に行った研究評価におけるピアレビュー結果と、引用数などの書誌計量学的指標との間の相関関係の分析や差異の要因分析を行い、書誌データを分析に用いることの妥当性を検討した。その結果、書誌計量学的指標によってピアレビューとおおむね一致する結果が得られた。それとともに、ピアレビューで生じやすい分野間での評価基準の違いという問題に対して、書誌計量学的指標は分野間での標準化を行えばその問題を改善するための情報を提供できることが示された。このように書誌計量学的指標の妥当性がある程度示されたことから、大学の研究活動の特徴の定量的分析方法の検討を行った。「アクティビティ指標」や「相対引用度」などの指標を用いることにより、各大学がどのような分野で研究の量やインパクトが大きいかをポートフォリオとして示す方法について検討をおこなった。得られたポートフォリオは大学によって大きく異なり、これを基にして各大学が自己の研究活動の特徴を把握して意思決定に利用することが可能であると考えられる。
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