本年度は昨年度に構築した論文データベースを用いて、学問分野別、セクター別(大学、民間企業、国立研究所、病院、非営利法人など)、および被引用度別に詳細な分析を行った。1980年代から2002年までの論文の変化を分析することにより、日本の大学や企業が関与している論文の数およびその世界シェアは増加しており、その中で大学セクターが常に8割程度に関与していることが明らかになった。一方で民間企業セクターや公的研究所からの英文論文については、全体的に見ると、そのほぼ半分が大学との共著となっており、産学官連携の促進を実証することができた。特に、製薬や化学工業の分野ではこの傾向がいっそう顕著であった。一方で大学セクター内部を詳細に分析した結果では、地方国立大学や公立・私立大学の論文数が増加傾向にあることが示された。だが被引用数別に区分して詳細な分析を行うと、被引用数が上位1%、10%、25%などの高いものに限定すると、以前として少数の国立大学のシェアが大きいままである。これらのことから、過去20年における日本の研究実施者の構造的変化を把握することができた。また、少数の大学については共著関係などからその研究活動の特徴の分析を行い、特殊法人との関係などにおいて特徴を見いだすことができた。
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