研究概要 |
3年間の研究計画の中で14年度は観測機器の設置に重点をおいた準備期間として位置付けて,設置場所選定や設置のための手続き行い,福岡都心部から南東部にかけての領域で博多湾及び玄海灘から進入する海風前線を捉えることができるように観測機器を設置した.現在,九州大学箱崎キャンパスと筑紫キャンパスで温湿度計の設置を完了した.さらに15年度の梅雨明けまでには背振山自衛隊基地にも温湿度計の設置を完了する予定である.また,風向風速計を筑紫キャンパスに導入予定である.このことにより玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化を捉えることができ,アメダス点における大気安定度を推定することができる.また山岳頂上部に温度湿度計を設置することで頂上部に蓄積する水蒸気とそれに伴う雷雲発生を捉えることも可能になる.これらの観測及び解析を通して局地的な雷雲と大気安定度との関連性を具体的に調べる予定である.観測期間は7月の梅雨明けから太平洋高気圧の勢力が弱まる8月下旬までとする.以下に示す項目は雷雲の発生と関係のある要素と考えられるので重点的に調査する. ・収束域で増加する水蒸気量 ・気温と水蒸気量の増加に伴う大気の不安定化 以上の項目について降雨と雷雲発生に関連する要素との間の因果関係をまとめ,夏季の局地雷雲予測を目的とした水蒸気監視ネットワーク構築のための基礎となるデータベース化を行う.14年度は水蒸気量を考慮せずに気温のみで大気安定度を推定して雷雲との発生との関連性を調べた.その結果,雷雲発生の時間帯と大気が最高の不安定度を持つ時間との間にずれがあること,さらに水蒸気混合比1g/kg程度の変動でも大気安定度が大きく変動することがわかり,大気安定度の変動に水蒸気量の役割が重要であることが示唆された.
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